ディップを調べようと思ったのは、利回りが良かったからじゃない。コロナ禍のいちばんきつい年に、EPS が 11 円しかなかったのに、56 円の配当を守り抜いた会社だったから。それだけで、深掘りする理由になった。
00
会社概要
Company Profile何をしている会社か
アルバイト・パート求人メディア「バイトル」「はたらこねっと」を運営する人材メディア最大手。求職者は無料で使い、企業が掲載料を払うビジネスモデル。
2020年代からは業務自動化サービス「コボット」でDX事業も展開。コボットとは「毎日繰り返す事務作業(データ入力・書類仕分け・集計など)をAIが自動でこなしてくれるソフト」のこと。導入した会社は乗り換えにくく、毎月の利用料が安定して入る。求人広告の利益を、この高利益率のソフト事業に再投資する二段ロケット構造。
2020年代からは業務自動化サービス「コボット」でDX事業も展開。コボットとは「毎日繰り返す事務作業(データ入力・書類仕分け・集計など)をAIが自動でこなしてくれるソフト」のこと。導入した会社は乗り換えにくく、毎月の利用料が安定して入る。求人広告の利益を、この高利益率のソフト事業に再投資する二段ロケット構造。
会社の基本情報
証券コード
2379(東証プライム)
業種
サービス業(人材)
設立
1997 年
従業員数
約 2,400 名
主力サービス
バイトル・はたらこねっと
成長事業
コボット(DX・RPA)
2 つの収益柱
📢 メディア事業 求人広告の掲載料収入。景気連動型だが圧倒的ブランド力と認知度が参入障壁。営業利益率は 15〜20% 程度。
🤖 DX 事業(コボット) 業務自動化 SaaS の月額課金。導入企業のロック効果が高く、営業利益率は約 50% と高水準。現在は先行投資フェーズで規模拡大中。
🤖 DX 事業(コボット) 業務自動化 SaaS の月額課金。導入企業のロック効果が高く、営業利益率は約 50% と高水準。現在は先行投資フェーズで規模拡大中。
🔍 構造リスク診断 — ガチホ前に確認すべき4つの問い
収益の持続性
🟡
DX移行期・5四半期連続コンセンサス未達
競合・代替圧力
🟡
Indeed台頭・バイトルのシェア推移を要確認
FCF・配当安全性
🟢
コロナ禍も配当維持・現時点で配当原資を確保
経営の資本配分
🟢
増配継続・有報開示の姿勢は誠実
🟢
全グリーン:下落時こそ買い増しの好機。確信を持ってガチホ。
🟡
イエロー混在:保有継続。FCFと配当方針を四半期ごとに再確認する。
🔴
レッド出現:減配・FCFマイナスなど。投資テーゼの根拠を一から見直す。
01
スコアサマリー
Score Summary
定量
71
財務諸表から算出した、財務諸表ベースのスコア。
財務数値は確かだが、成長性は中計フェーズ2で変化が見込まれる。
定性
92
有価証券報告書を読み込んで分析した、企業の本質を採点したオリジナルスコア。
有報の誠実さが際立つ。リスク開示の踏み込み方が他社より具体的。
総合
83.6
定量スコアを 40%・定性スコアを 60% で加重平均した、購入判断用の最終スコア。
数字で買うのではなく、"数字 × 物語" で買う。定性を 6 割重視するのが、ほのたね。流。
02
基本データ
Key Metrics| 項目 | 値 | 補足 |
|---|---|---|
| 年間配当 | 95 円 | 2026/2 期 会社予想 |
| 配当利回り | 4.17 % | 株価 2,279 円換算 |
| 連続増配 | 約 13 年 | 2013/2 期〜 |
| 配当性向 | 50% 以上 | 目標水準 |
| 総還元性向 | 65% 目安 | 自己株含む |
| 自己資本比率 | 約 70 % | 2025/2 期末 |
| 取得単価(平均) | 2,006 円 | 2026/3〜4 購入 |
| 保有株数 | 10 株 | ジュニア NISA 口座 |
| 取得ベース利回り | 4.74 % | 95 ÷ 2,006 |
03
業績の推移
Financial Performance, 5y
売上高 5年 CAGR +14.8%
売上高
営業利益
📌 5年間の軌跡:2021年(コロナ禍)→ 売上325億・利益74億・EPS 11円に急落。それでも配当56円を維持。2022年以降は急回復し、2025年は売上564億円・利益134億円(過去最高)・EPS 168円と大きく成長。2026年は AI 投資・人件費増で一時的な減益計画(先行投資フェーズ)だが、累進配当方針は維持を明言している。
売上 5年CAGR
+14.8%
325億→564億(4年)
2025年 最高益
134億
営業利益 / 利益率23.8%
コロナ禍でも
配当維持
EPS 11円でも 56円を守った
04
配当の歴史
Dividend Track Record, 10y
連続増配年数
13
年継続(2013/2 〜)
コロナ禍の実績
56 円
2021/2 期 維持
配当性向 505% でも減配せず
10年増配率
+375%
20円 → 95円へ(2017→2026)
コロナ禍でも配当維持 ✓
年間配当(円)
配当性向(右欄): 2021年は 505%、近年 51〜97%
| 期 | 年間配当 | 配当性向 | 備考 |
|---|---|---|---|
| 2021/2 | 56 円 | 505 % | ⚠ コロナ禍でも維持(EPS 11円) |
| 2022/2 | 61 円 | 97% | 業績回復途上でも増配 |
| 2023/2 | 72 円 | 51% | |
| 2024/2 | 88 円 | 54% | |
| 2025/2 | 95 円 | 56% | 過去最高益・過去最高配当 |
| 2026/2 予 | 95 円以上 | — | 累進配当方針。先行投資でも維持 |
※ 2017〜2020年は 20→30→45→55 円と連続増配。グラフ参照。
ここまで 配当・業績データ / ここから 財務の安全性・事業の質
05
配当を支える「お金の流れ」
Free Cash Flow(FCF), 5y
FCF(フリーキャッシュフロー)とは?
営業CF(本業の稼ぎ)+ 投資CF(設備・システム投資等の支出)の合計。
会社が配当・借金返済・新事業投資に自由に使えるお金の量を表す。
FCF がマイナスでも、本業(営業CF)が黒字なら配当支払い能力とは別問題。
営業CF(本業の稼ぎ)+ 投資CF(設備・システム投資等の支出)の合計。
会社が配当・借金返済・新事業投資に自由に使えるお金の量を表す。
FCF がマイナスでも、本業(営業CF)が黒字なら配当支払い能力とは別問題。
営業CF 5期連続 黒字 ✓
本業で稼いだお金(営業CF)
自由に使えるお金(FCF)
📌 5期連続で営業CF・FCF ともに黒字。コロナ禍の 2021 年度でも FCF は +21.9億円と黒字を維持。2024年度は大型投資の影響でFCF 54.0億円に低下したが、配当支払い(約 14 億円)は十分に賄える水準。2025年度は過去最高の 110.1億円。「稼いで払っている」を確認してから、買いを決めた。
※ FCF = 営業CF + 投資CF。配当支払い額は 95円 × 約 1,500万株 ≈ 14 億円と推定。
※ FCF = 営業CF + 投資CF。配当支払い額は 95円 × 約 1,500万株 ≈ 14 億円と推定。
06
事業の強み
Business Strengths📢
バイトルブランドの市場支配力
求人広告市場でのトップブランド。パート・アルバイト領域で認知度が高く、広告主・求職者双方のネットワーク効果が競合参入を阻む。
シェア最大級
🤖
コボット(業務自動化ソフト)の利益率 約 50%
データ入力・書類仕分け・集計などの繰り返し作業をAIが代行するソフト(月額課金)。一度使い始めると他システムに切り替えにくく、解約率が低い。求人広告の利益を、この安定収益型ビジネスに回す設計。
OPM ≒ 50 %
🧠
AI シフトへの先行投資
求人領域に生成 AI を組み込み、求職者・求人企業双方の体験を再設計。短期は減益要因だが、5 年スパンの堀になり得る投資。
中計フェーズ 2
📈
累進配当の設計と実績
「前期配当額を下限とする」と明文化済み。中計でも 配当性向 50% 以上 / 総還元 65% を掲げ、株主還元を経営指標に組み込んでいる。
13 期 連続 増配
07
リスク警告
Caveats
⚠ この銘柄を持つ上で、目をつぶってはいけない 3 点
RISK / 01
(構造)
(構造)
求人広告モデルへのAI代替リスク
求人検索・マッチングが LLM・エージェントに置き換わる可能性。"求人ポータルに広告を出す" という構造そのものが揺らぐ未来は、想定しておく必要がある。
RISK / 02
(人的資本)
(人的資本)
離職率 19.9%
(目標 10%・悪化傾向)
(目標 10%・悪化傾向)
中期経営計画で目標 10% を掲げる中、足元は 19.9%。採用・教育コストの増加や、ナレッジ流出による生産性低下のリスク。
RISK / 03
(業績)
(業績)
2026 年 2 月期は
意図的減益計画(先行投資フェーズ)
意図的減益計画(先行投資フェーズ)
AI 関連投資・人件費増により、短期 EPS は一時的に低下する見通し。配当維持の前提だが、減配圧力に転じないかは要監視。
ここまで 定量・リスク分析 / ここから 有報を読んで初めてわかること
08
有報精読で見つけたこと
Annual Report Insights
配当方針
中計・有報より
「前期配当額を下限とする」が有報に明文化されている
多くの会社は「安定配当を目指す」という曖昧な一文で済ませる。ディップは中期経営計画と有報に「前期配当額を下限とする累進配当」と明記している。慣行ではなく、経営陣が株主へ正式にコミットした約束の言葉だ。
→ コロナ禍の配当性向 505% は感情的な判断ではなく、「明文化した方針通りに動いた結果」。この一点だけで信頼度が大きく上がる。
人的資本
有報 人材育成より
都合の悪い数字(離職率 19.9%)を自ら開示している
多くの会社は離職率を公表しない。ディップは人的資本開示として「離職率 19.9%(目標 10%)」を有報に自ら記載している。目標値より大幅に悪い数字でも隠さない透明性は、長期保有を判断するうえで重要なシグナル。
→ 定性スコア「経営の誠実さ 95点」の主な根拠。次の有報で改善傾向を確認するのが継続保有の条件。
リスク開示
有報 事業リスクより
「AIによる自社サービスの代替リスク」を会社自身が有報に記載している
AI・機械学習の普及によって求人ポータルへの広告掲載モデルそのものが陳腐化するリスクを、他の誰でもなく会社自身が有報のリスク項目に記載している。多くの同業他社はこのリスクをほとんど開示していない。
→ 自社のビジネスモデルを脅かすリスクを正直に書ける会社は、長期保有に値すると判断した。定性スコア「リスク開示 83点」の根拠。
株主還元
中計資料より
「総還元性向 65%」を中計に明記。配当+自社株買いで還元
配当性向 50% 以上に加えて、自社株買いを組み合わせた「総還元性向 65%」を中期経営計画に明示。配当だけでなく、株価水準を見ながら機動的に還元できる設計が組み込まれている。
→ 定性スコア(92点)が定量スコア(71点)を 21 点上回る主因。数字に表れない株主へのコミットメントが分厚い銘柄。
09
購入判断
Decision
| 項目 | 判断 | 補足 |
|---|---|---|
| 現在の利回り | 4.17%(★ 購入ゾーン) | 購入基準: 利回り 4% 以上 |
| ゾーン | ★ 購入 | 現在ゾーン |
| 買増優先度 | 中 | 含み益あり。〜 2,100 円帯で追加想定 |
| ガチホ適格 | ✓ 適格 | 20 年保有を前提とできる事業構造・配当方針 |
| ポジション | +13.6% | ウェイト 4.6%(目標 6%) |
