スクリーニングに「配当 93 円」と出た。
のど飴で国内首位、三菱商事が 3 割近く握る安定株主構造——調べれば調べるほど、事業としては文句のつけようがない会社だった。
ところが有報を読み始めて、気づいた。2022 年と 2025 年、2 回の株式分割で株数が 6 倍に増えていた。スクリーニングが表示していた「93 円」は、分割前の配当だ。実際の年間配当は 33 円。利回りは 7% 台ではなく、2.77% だった。
もう買ってしまったあとだった。
それでもこの会社の有報を最後まで読んで、累進配当方針が明文化されていること、朝日工場の増築投資が承認済みであること、のど飴カテゴリが 20 年消えない需要であることを確認した。高値づかみの事実は変えられない。でもガチホする理由もある。これは、そのすべてを正直に書いた記録だ。
00
会社概要
Company Profile何をしている会社か
のど飴・グミ・飴菓子を製造・販売する食料品メーカー。「のどケア」「リフレケア」等ののど飴カテゴリで国内首位シェアを保持。「金のミルクキャンデー」「ピュレグミ」「カンデミーナ」等のロングセラーブランドが収益の柱。
コンビニ・ドラッグストア・スーパーの全国網羅的な販路を持ち、三菱商事グループの流通力がその基盤を支えている。
コンビニ・ドラッグストア・スーパーの全国網羅的な販路を持ち、三菱商事グループの流通力がその基盤を支えている。
会社の基本情報
証券コード
2216(東証プライム)
業種
食料品
設立
1912 年(大正元年)
決算期
12 月期(年 1 回)
主力商品
のど飴(カテゴリ首位)
成長商品
グミ(金のミルク・ピュレグミ等)
2 つの収益の柱
🍬 のど飴事業 ノンシュガー・ハーブ系を中心としたのど飴カテゴリで国内首位。「龍角散ののどすっきり飴」等のOEM・コラボ製品も展開。薬局・コンビニでの定番棚を占有し、季節需要を超えた通年消費が定着している。
🐻 グミ・菓子事業 「金のミルクキャンデー」「ピュレグミ」等のロングセラーに加え、グミサシェ市場の拡大が追い風。2027 年完成予定の朝日工場新棟(130 億円投資)はグミ増産を主目的とした大型設備投資。
🐻 グミ・菓子事業 「金のミルクキャンデー」「ピュレグミ」等のロングセラーに加え、グミサシェ市場の拡大が追い風。2027 年完成予定の朝日工場新棟(130 億円投資)はグミ増産を主目的とした大型設備投資。
🔍 構造リスク診断 — ガチホ前に確認すべき 4 つの問い
収益の持続性
🟢
のど飴需要は通年・全年齢。カテゴリ首位の価格転嫁力あり
競合・代替圧力
🟡
グミ市場の競合激化(明治・ロッテ等)。コンビニ棚争いは継続課題
FCF・配当安全性
🟡
FCF 安定黒字だが 2020 年のみ一時マイナス。配当性向 40% 方針は高め
経営の資本配分
🟢
累進配当明文化(下限 31 円)。三菱商事 29.55% 筆頭株主で経営安定
🟢
全グリーン:下落時こそ買い増しの好機。確信を持ってガチホ。
🟡
イエロー混在:保有継続。FCF と配当方針を半期ごとに再確認する。
🔴
レッド出現:減配・FCF マイナスなど。投資テーゼの根拠を一から見直す。
01
スコアサマリー
Score Summary
定量
41
財務諸表から算出した、数値ベースのスコア。
利回り・バリュエーションが低スコアの主因。取得価格が高値づかみの影響を直撃している。
定性
94
有価証券報告書を精読し、企業の本質を採点したオリジナルスコア。
累進配当の明文化・三菱商事の株主構造・のど飴首位のブランド持続性が満点に近い評価を牽引。
総合
72.8
定量スコアを 40%・定性スコアを 60% で加重平均した購入判断用の最終スコア。
NB と ko の乖離(+53)は全保有銘柄中最大。事業の質を信じ、取得ミスを認めた上でガチホを選んだ結果。
02
基本データ
Key Metrics| 項目 | 値 | 補足 |
|---|---|---|
| 年間配当 | 33 円 | FY2026/12 期 会社予想 |
| 配当利回り(現在) | 3.01 % | 株価 1,096 円換算(2026-04-30) |
| 配当利回り(購入時) | 2.77 % | 取得単価 1,190 円換算 |
| ★ 購入ゾーン下限 | ¥825 以下 | 利回り 4.0% 達成ライン |
| 連続増配 | 4 期連続 | FY2022〜FY2025 実績 |
| 自己資本比率 | 57.8 % | FY2024/12 期末 |
| PER | 13.4 倍 | 1,096 円 ÷ EPS 81.87 円(FY2026 予) |
| 売上高 | 318 億円 | FY2024/12 期(実績) |
| 営業利益 | 42.8 億円 | 営業利益率 13.5% |
| 取得単価(平均) | 1,190 円 | 2025 年秋 購入 |
| 保有株数 | 15 株 | ジュニア NISA 口座 |
| 取得ベース利回り | 2.77 % | 33 ÷ 1,190 |
| 年間受取配当(見込) | 495 円 | 33 円 × 15 株 |
※ 株価チャートは省略。株式分割 2 回(2022 年・2025 年)による歴史的データの連続性が担保できないため。
03
業績の推移
Financial Performance, 5y
売上高 5年 CAGR +12.8%
売上高
営業利益
📌 5 年間の軌跡:FY2020(コロナ禍)は売上 196 億・営業利益 8.4 億でスタート。原材料高が続く中、2022 年の価格改定が転機となり、FY2023 以降は売上・営業利益ともに急成長。FY2024 は 318 億・42.8 億と、いずれも過去最高水準。営業利益率は FY2020 の 3.6% から FY2024 の 13.5% へと大幅改善。「値上げ耐性 = ブランド力の証明」と読んでいる。
売上 5年 CAGR
+12.8%
196 億 → 318 億(5 年)
営業利益率
13.5%
FY2024 実績(FY2020 は 3.6%)
5年 OP 成長倍率
5.1 倍
8.4 億 → 42.8 億
04
配当の歴史
Dividend Track Record株式分割
2 回
2022年7月 1:2 / 2025年7月 1:3
FY2025 実績配当
32 円
分割調整済み(FY2026 予:33 円)
3年増配率
+205%
10.5円 → 32円(FY2022→FY2025)
FY2022 → FY2025 4 期連続増配 ✓
年間配当(円・分割調整済み)
⚠ 株式分割を確認しなかった——「93 円」の正体
スクリーニングに表示されていた「93 円」は、FY2024 に実際に支払われた配当の分割前の値だった。
| 時点 | 1 株配当 | 内容 |
|---|---|---|
| 2025年7月分割前(FY2024実績) | 93 円 | スクリーニングに残っていた数値 |
| 2025年7月 1:3 分割後 | 31 円 | FY2024 の分割調整後実績 |
| FY2026/12 期 会社予想 | 33 円 | 購入判断に使った数値(正しい) |
📌 教訓:スクリーニング後・有報精読前に「株式の状況(第5 提出会社の状況)」で分割履歴を確認する。これを分析フローのファーストチェックとして固定する。
| 期 | 年間配当 | 備考 |
|---|---|---|
| FY2022/12 | 10.5 円 | うち創業 110 周年記念配当 5 円含む |
| FY2023/12 | 19.33 円 | |
| FY2024/12 | 31.0 円 | 分割前実際支払額 93 円(1:3 分割後 31 円) |
| FY2025/12 | 32.0 円 | 実績 |
| FY2026/12 予 | 33.0 円 | 会社予想。累進配当方針継続 |
※ 数値はすべて 2025 年 7 月の 1:3 分割および 2022 年 7 月の 1:2 分割を反映した分割調整済みの値。
ここまで 配当・業績データ / ここから 財務の安全性・事業の質
05
配当の源泉(FCF)
Free Cash Flow
FCF(フリーキャッシュフロー)とは?
営業活動で稼いだ現金から設備投資を差し引いた「手元に残る本物の現金」。配当・自社株買い・借金返済の原資はすべて FCF から来る。FCF が黒字でも配当を出せない会社はない。逆に FCF が赤字続きの高配当は「配当を削る予兆」と読む。
営業活動で稼いだ現金から設備投資を差し引いた「手元に残る本物の現金」。配当・自社株買い・借金返済の原資はすべて FCF から来る。FCF が黒字でも配当を出せない会社はない。逆に FCF が赤字続きの高配当は「配当を削る予兆」と読む。
FCF 推移(2020–2024年)
出典:有価証券報告書(キャッシュフロー計算書)
単位:億円
FCF プラス(黒字)
FCF マイナス(赤字)
FCF サマリー:2021 年以降 4 年連続黒字。2023・2024 年は 20 億円超。年間配当総額(33 円 × 約 1,400 万株 ≈ 4.6 億円)の 4〜5 倍を稼いでおり、配当の安全性は高い。2027 年完成予定の朝日工場増築(130 億円)で一時的に投資 CF が膨らむが、FCF はマイナス転落には至らない見込み。
ここまで 財務・配当データ / ここから 事業の質・リスク
06
事業の強み
Business Strengths🍬
のど飴カテゴリ首位
ノンシュガー・ハーブ系のど飴で国内トップシェア。「のどケア」「リフレケア」等のブランドが薬局・コンビニ棚に常設。季節を問わず通年消費される生活必需品的な需要構造が安定収益を支える。
カテゴリ首位 × 通年需要
🐻
グミ市場での拡大路線
「金のミルクキャンデー」「ピュレグミ」「カンデミーナ」等のグミ製品が国内グミ市場の成長を取り込み中。2027 年完成予定の朝日工場新棟(130 億円投資)は主にグミ増産を目的とした大型設備投資。
朝日工場 130 億円投資(2027年完成)
🏢
三菱商事 29.55% 安定株主
三菱商事が筆頭株主として 29.55% を保有。原料調達(糖質原材料)・流通・販売ネットワークで強力なバックアップ。グループ取引による調達コスト優位性と全国棚確保力が競争優位の源泉。
三菱商事 29.55% 保有
📜
累進配当方針の明文化
有価証券報告書の配当方針に「前期配当を下回らない累進配当」と明記。分割後 31 円が下限。FCF が 20 億円超で配当総額 4.6 億円のため、よほどの業績悪化がなければ減配リスクは低い。
下限 31 円 累進配当 明文化
07
リスク警告
Risk Factors⚠️ 投資テーゼに影響する可能性のあるリスク(3 項目)
購入コスト
株式分割未確認による高値づかみ
取得価格 @1,190 円は 2025 年 7 月の 1:3 分割前データを参照して購入判断した結果。分割後の実際配当は 33 円・利回り 2.77%。分割後データで確認していれば購入しなかった可能性が高い。今後の追加購入は ¥825 まで厳格停止。
コスト圧力
食品原材料・包装コストの高騰
砂糖・糖質原料・包装材の調達コストが円安・食品インフレで上昇傾向。ブランド力による価格転嫁が可能だが、値上げに対する消費者の反応によっては販売量が影響を受ける可能性がある。有報で「重要なリスク」として明示されている。
市場競合
グミ市場の競合激化
明治・ロッテ等の大手菓子メーカーがグミカテゴリへ注力を強めている。コンビニ棚の占有率争いは厳しく、カンロのシェアが侵食されるリスクがある。朝日工場の増産投資が競合優位を維持できるかは要注視。
ここまで 強み・リスク / ここから 有報精読・購入判断
08
有報精読インサイト
Annual Report Deep Dive
配当方針
第 4 章
「前期配当を下回らない」——累進配当方針が有報に明文化
有価証券報告書の配当方針の記述に「配当は前期の配当金額を下回らない水準を維持することを基本方針とする」と明記されている。これはスクリーニングや IR 説明会では伝わらない「本物の約束」だ。分割後の下限は 31 円(FY2025 予想は 33 円)。
有報精読前は「配当が増えてきたのは過去データだけの話」と思っていたが、明文化された方針があることで確信に変わった。
株主構造
第 2 章
三菱商事 29.55% ——「実質的親会社」が経営を安定させる構造
大株主一覧で三菱商事が 29.55% を保有していることが確認できる。単なる株主以上に、原料調達・販路・物流の全てで取引関係が記述されている。カンロにとって三菱商事は「外部のサポーター」ではなく「事業の骨格を支えるパートナー」と読める。
グループ取引の具体的な金額・条件は関連当事者の注記で確認できる。外国法人比率が低水準なのも、三菱商事と安定株主が大部分を占めるためと推測される。
設備投資
第 3 章
朝日工場新棟 130 億円——グミ需要に賭ける「攻めの投資」
設備投資の注記に朝日工場新棟(130 億円・2027 年完成予定)が承認済み案件として記載されている。主目的はグミ・飴の生産能力増強。現在の FCF(年 18〜21 億円)に対して大型投資だが、借入金を活用した計画であり、自己資本比率(57.8%)の健全性を前提とした判断。
2027 年完成後に EBITDA・利益率が改善され、増配につながるかが次の確認ポイント。工場完成まではキャッシュアウトが続く「辛抱フェーズ」と捉えている。
投資教訓
自己記録
株式分割確認は「分析の最初の 1 行目」——最大の失敗として記録
スクリーニングが「配当 93 円」と表示 → 実際は 1:2(2022 年 7 月)+1:3(2025 年 7 月)の 2 回分割で株数 6 倍。分割後の正しい配当は 33 円(93 円 ÷ 3 ≒ 31 円→増配で 33 円)。利回りは 7% 台ではなく 2.77%。有報の株式の状況・大株主欄には株式分割の履歴も記されている。
教訓:スクリーニング使用時は「直近 1 年以内に株式分割があったか」を有報または会社 IR で必ず確認してから購入判断を下す。これは今後すべての銘柄分析の Step 0 とする。
09
購入判断
Investment Decision| 判断項目 | 現在の評価 | 補足・条件 |
|---|---|---|
| 現在の利回り(市場価格) | 3.01%(△ 待機) | 株価 1,096 円 ÷ 配当 33 円(FY2025 予想) |
| 取得ベース利回り | 2.77% | 取得単価 @1,190 円。高値づかみの記録として残す |
| 購入ゾーン | △ 待機中 | ◎ 検討: 利回り 3.0% 以上 / ★ 購入: 4.0% 以上(¥825 以下) |
| 買増優先度 | 完全停止 | ¥825(利回り 4.0%)到達まで追加購入ゼロ |
| 継続保有(ガチホ) | ✅ 継続 | 保有 15 株はガチホ。累進配当方針・ブランド力に確信あり |
| テーゼ見直し条件 | 2027 年を注視 | 朝日工場完成後の利益率改善・増配確認 → 判断再考 |
| 売却条件(テーゼ崩壊) | 発動なし | 減配 or FCF マイナス転落 or 三菱商事の持株放棄 → 即再考 |
